怪しげな薬と感じた為に机の引き出しの中に仕舞い込んでいたお薬、その名を精神安定剤といいます。大学病院の院内薬局で7錠ほど処方されていたのですが、精神安定剤という呼び名がいまいち説得力に欠けるというか、飲む意欲を失せさせる原因となっていたのです。
私は飲酒をほとんどしません。なぜなら、お酒はおいしいと思いますが、少量でもすぐに酔ってしまい、気分が悪くなるからです。それと同じで、精神安定剤を飲むと気分が悪くなるんじゃないかと勘ぐってしまい、その薬は引き出しの中で肥やしとなっていたのでした。
人生初の精神安定剤服用
さて、大発作から数日後のこと。私は夜の20時頃から具合が悪くなり始めていたので、仕事を早めに切り上げて自宅へ戻っていました。しかし容態は確実に悪化する一方です。パニック発作のレベルは中発作程度です。簡単に中発作といいますが、かなり耐えがたい恐怖感に襲われます。先日の救急車事件のこともあり、大騒ぎするのは止そうと考えていましたが、なんとかしないとこのまま発作が暴走して救急車を呼ぶ羽目になりそうです。
一人で自宅にいると倒れた時に困るなと考えて、歩いて30秒の職場へ行くことにしました。時刻は21時でした。事務所では仕事を終えたYさんとIさんがコーヒーを飲みながら談笑していました。彼らが「支店長、忘れものでも取りに戻ってきたのですか?」と怪訝そうな顔で聞いてきましたが、私は「いつもの体調不良だが今日のはかなりきつい。相当まずいよ」と一生懸命に症状を彼らに伝えます。
そうするとYさんがひと言「このまえ救急車で運ばれた時に、薬をもらっていないのですか?」と聞いてきました。たしかに例の近所の大型総合病院では、なんの処方箋も受け取っていませんが、会社の事務所の引き出しに怪しげな薬があることを思い出しました。
私は彼らに「以前もらった怪しげな薬を持っている。今からそれを試しに飲んでみるから、俺の容態が急変したら救急車を呼んでくれ」とお願いして、急いで薬を引き出しの中から取り出します。Iさんが水を持って来てくれたので、白い錠剤を一錠、プチッと押し出して水と一緒に飲み込みました。薬を服用後、私は会社の机の上によじ登って、机の上で横になります。YさんとIさんが「どうですか?」と聞いてきますが、今飲んだばかりで分かる筈がありません。
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