精神安定剤を初めて飲む瞬間 その2(第29話)

マウスとクリック

さあ、精神安定剤を飲みました。どうなるの?

断末魔の苦しみと申しますか、生きた心地がしません。強烈なの恐怖感です。しかし、時刻21時20分頃、容態が急変します。先程までの猛烈な恐怖感が、頭の中からスッと消えていきます。薬を服用してわずか15分です。「えっ? 嘘? 治っちゃった」。YさんとIさんが「再び容態はどうですか?」と聞いてきます。私はスッと立ちあがって、「いやあ、もうなんともないよ。絶好調だよ」と大声で喜びを彼らに伝えました。
YさんとIさんは、「よかったですね。じゃあ俺らはもう帰ります」と言い残して、会社を後にしました。私は会社の事務所の中で一人ぽつんと居残っているのですが、薬の服用前とその15分後の容態の違いに、大きな喜びの感情とは別に、さっき服用した白い錠剤に対しての疑問が浮かび上がってきました。

白い錠剤の威力は凄かったです

「大学病院の先生は精神安定剤と言っていたが、薬の成分はどうなっているんだろう? 薬の有効成分や作用の仕方についても調べて見る必要があるな」と感じて、会社のパソコンの電源を入れます。ウイキペディアで ”精神安定剤”を検索してみましたが、以前同じページを閲覧したことを覚えていました。このページは以前も読んだが、役に立たなかったなと感じながらも「薬理・適応・物性」などの項目を一通り読み進めていきます。
以前にこのページを閲覧した時は、適応の項目に記載のあったうつ病のページのリンクをクリックしたのを覚えていたのですが、今回はなんとなく神経症をクリックしてみます。適当に読みながら「パニック障害」という言葉を目にします。生まれて初めて聞く言葉です。そして試しにクリックしてそのページを読み進んでいきました。そしてこれが当時の私の感想です。「俺のことが書いてある(笑)」
あまりにも記載されている症状が、私の症状と完全に一致していたので、思わず笑ってしまったのをよく覚えています。ついに体調不良の原因がわかったような気がしました。その後、パニック障害で検索をしてウイキペディア以外のページも閲覧したのですが、疑念が確信へと変わりました。どう考えても私の病名は精神疾患パニック障害です。
そして、そのパニック発作を抑えてくれる薬が精神安定剤なのです。この精神安定剤というお薬の事は、もう少し後に詳しく書きますが、恐ろしく強力な薬理作用があり、即効性に優れていますので当初はとても気に入りました。調べれば調べるほど、非の打ちどころが無いお薬に見えてきます。でもね、基本的に薬とは毒なのです。毒の成分を弱めたり、特定の成分だけを濃縮したりしたのがお薬なので、使い方を誤ると副作用の方が薬の効用よりも目立つこともあるのです。

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