なんとか救急車の手配は終わりました。仕事の段取りも社員を事務所へ戻ってくるように手配したので、その点も問題ありません。倒れているのにも関わらず仕事の事を心配するなんて余裕だなと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。この段階でも、私は自分がパニック障害を患っていて、その発作が発症していることは知りませんので、もう訳が分かりません。
救急車が到着するまでは約10分も掛からなかったと記憶していますが、その間に色々と考えを巡らせました。それは次のような事でした。「もしこのまま亡くなったら悔いが残る人生だな。このまま回復しないかもしれないが、もし回復したら仕事を辞めて自由に生きたい。次に倒れた時には、我が人生悔いなしと思える最後の瞬間を迎えたい。」
これが私が人生で初めて、自分の人生の最後をリアルに意識した時に考えたことでした。「なぜ人生の最後の瞬間を、職場の事務所の中の床の上で迎えなければならないんだ?」これがサラリーマン人生に終止符を打つ決断の瞬間でした。まあ、この思いは、パニック障害の考察からはちょっと脇道にずれていますね。ははは。
さて、待ちに待った救急車のサイレンが聞こえてきました。人生初の救急車のお迎えです。救急隊員が二名で会社の事務所に入ってきました。一人の隊員がすぐに私の血圧を測り始めます。もう一人の隊員が私に容態の確認の質問をします。私は「良く分からないがとにかく意識を失いそうだ、助けてください」を連呼するだけです。人間、ピンチになると恥も外聞もありません。
(ここで、ちょっと解説をいれますね。第6話で述べましたが、人間が最後の時を迎える時は血圧は低下します。血圧200を超える例としては、100メートルダッシュをすれば誰でも血圧は200を超えます。)
血圧を測定し終えた隊員さんが「血圧210です」ともう一人に報告します。先程まで椅子に座って安静にしていたのに、一瞬で血圧210です。そりゃあ、自分でも体の変化に気がつきますね。心臓系の不調や異常の時には、大抵の場合胸が痛いというよりわき腹から不快な吐き気を感じるそうですが私の場合もそうでした。パニック発作がそうさせたのか、血圧が跳ね上がったからパニック発作が起きたのかは分かりませんが、とにかく血圧210です。
私のその他の症状としましては、とにかく口と喉がカラカラに乾いて、言葉を発するのも難しい状況です。救急隊員さんがストレッチャーを持ってきて、会社の出入り口へセットします。「歩けますか?」と聞かれましたが、私は無言で首を振ります。
そうすると隊員さんが足側と胸側から私を抱え上げて、ストレーッチャーへ乗せてくれました。いざ、救急車の中へ移動です。事務員Tさんが会社へ戻ってきたので、一緒に救急車へ同乗します。しかし、待てど暮らせど救急車が発車しません。
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